皆さんは、富士山の山頂をすっぽりとおおう帽子のような雲、「笠雲」をご存知ですか?
晴天なのに富士山の山頂だけ出現する笠雲、二重、三重にも重なっているような笠雲、富士山山頂とは少し離れた場所に出現する笠雲…様々な表情を見せてくれる面白い雲です。
でもなぜ、富士山の山頂や付近でこのような不思議な形をした雲が出現するのか、疑問に思いますよね。
それに、このような不思議な光景を目の当たりにすると「何か不吉なことの前兆…?」「いやいや、縁起がいいのでは?」といろいろな思いがよぎりますよね。
今回はこの富士山の美しくもちょっと不気味な笠雲について解説していきます。
目次
なぜ笠の形をした雲になるの?
富士山に笠雲が出現する仕組みを紹介します。
①よく、天気予報で「南からの湿った空気が…」というセリフを聞くと思います。富士山の南側には太平洋があって、太平洋の水蒸気を含んだ風が北上してよく日本にやってくるのです。
②この湿った風が富士山にぶつかると、富士山の斜面にそってどんどん上昇し、標高が上がるにつれて湿った空気は冷えていきます(標高は気圧が低いから、気温も下がるのです)。
③湿った空気が冷えると今度は「結露」という現象が起こります(寒い冬の窓ガラスに水滴が着くのと一緒)。こうして雲が出来上がっていきます。
④この一連の流れがずーっと発生するので笠雲の形になります。笠雲は静止しているようで、実はずーっと風が流れ続けているおかげであのような形になるのです。
「富士山に笠雲が見えたら雨が降る」ふもとの先人たちの知恵
地球の周りに人工衛星なんて便利なものが飛ぶ前、人々は自然に見られる様々な様子や経験則から天気を予測してきました。
富士山の笠雲もその一つ。「富士山に笠雲が見えたら雨が降る」というのはおまじないでもなんでもなく、確かにその通りなのです。なぜなら上で説明した通り、笠雲が発生したとき周りは晴れていても、実はふもとには湿った空気が流れてこんできている証拠なのです。
富士山の笠雲は地震の前兆!?
科学的に「湿った空気が〜〜、結露して云々〜〜」と言われても、不思議な光景を目にすると「何か不吉なことが起こる前兆なのでは…」といろいろ勘ぐってしまいますよね。
また、下記のようなブログ記事も見つけました。
東日本大震災の5日前に富士山の上に笠雲ができているのを見た、
という人は多いですね。
ある統計では、
富士山に笠雲が出来た日から翌日までに
地震が起こる確率は50%なんだそうです。
それで、富士山の笠雲は地震雲ではないか?
とする説がありますね。
しかし上記のような書き込みはトンデモ記事であることがわかります。
東日本大震災は東北の地震。数百キロも離れた地での地震に、なぜ富士山の笠雲が影響するのでしょうか?それも、5日前とは少々日があいてしまっていますね。
富士山の笠雲ができてから翌日までに地震が起こる確率、と書いてありますが、いったいどの範囲で、震度いくつ以上のお話でしょうか。実はみなさまあまり気付いていないかもしれませんが、日本国内に範囲を絞っても震度1以上の地震は毎日発生しています。
以下の画像は、この記事を執筆している時点での地震一覧です。毎日地震が起きていますね。
こうなると、富士山の笠雲が発生したから地震が発生した!というのはやや無理があります。地震大国日本だから、何からの自然現象から地震を予測できたら便利なのですが…残念ながら富士山の笠雲は関係なさそうです。
まとめ
富士山の笠雲について説明いたしました。太平洋の湿った空気が富士山にぶつかることで、笠雲は発生します。古来から天気予報に役立ってきた富士山の笠雲は、残念ながら地震予報に役立つとは言い難いことがわかりましたね。もし富士山の笠雲が見えることがあれば、早めに笠の準備をしましょう!